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2025.12.04

フィリピン人就労者の才能を、100%活かす方法【人事担当者必見】

フィリピン人はなんて歌や踊り、楽器演奏が上手なのだろうと思ったことはないでしょうか。
クリスマスパーティーなどの会社の行事では、頼まれてもいないのに出し物を準備してきて、その出来栄えにも驚かされます。
在比日系法人の職場では、何カ月も前から準備を始め、直前ともなれば営業時間終了とともに練習に勤しむローカルスタッフの姿を見ることが出来ます。彼らの抜群のチームワークに敬服するとともに「仕事にもあれくらい熱心になってくれたら」と、日本人管理者の口から冗談とも本気ともとれる感想が洩れるのもお約束です。
今日はフィリピン人がなぜ歌舞音曲に秀でているのか、その文化的背景を解説し、企業がフィリピン人を採用する際に理解しておくべきポイントを紹介します。

 

民族舞踊文化と職場で生かせる強み

 

フィリピンの観光客向けの民俗村やレストランでは、各地の民族舞踊のオムニバスショーが演じられています。彼らはプロの踊り手なので、見栄えのする振り付けで鑑賞に堪えうる演目に昇華しています。しかしその原型となっている地域色豊かな舞踊は、今なお彼らの日々の生活に結び付いた生きた伝統です。土着のお祭りや冠婚葬祭に参加する機会があれば、そのことがよくわかります。
古来より地元に伝わる楽器や踊りに幼少のころから触れ、舞い歌う大人たちの動きに目を輝かせて見入る子供たち。誰に教わるともなく見よう見まねで加わり、いつしか文化継承の担い手になっていきます。
筆者が滞在していたルソン島北部の山岳民族には「ガンサ」と呼ばれる、金属製のゴングを打ち鳴らす舞踏と演奏が混然一体となった伝統文化があります。ある村のお祭りで催されたガンサのコンテストでは、優勝した隣村のチームが、大会が終わってひとしきり飲み食いをして帰途につこうとしたところを、たくさんの村人に「もう一度、帰る前に見せてほしい」と乞われ、日が暮れるまで見事な群舞を披露してくれました。主催者の長老の一人が「自分が子供のころは谷一つ越えた村のガンサでも、独特のリズムとハーモニーがあった。今はどの村もだいたい同じになってしまったけれど、あの村のガンサは別格だ」と話していたのを覚えています。

 

★企業が注目すべきポイント★

幼少期から伝統音楽や踊りに触れることで、自然にリズム感や表現力が育まれ、フィリピン人が持つ協調性・表現力の源泉となっています。職場イベントやチームビルディングで、彼らのパフォーマンス力は大きな強みとなります。

 

 

キリスト教布教手段としての芸能とフィリピン人の優れた表現力

 

フィリピン人の「人前で堂々と歌い、演じる力」は、歴史的背景が影響しています。
スペイン植民地時代、多言語国家であるフィリピン各地にキリスト教を布教するために、歌と演劇は少なくない貢献をしたことでしょう。音楽は世界共通言語ですし、熟練した演者の芝居は言葉を超えて感情に訴えかけてきます。
現在でも、聖週間にはイエスの受難を素人有志が演じる「セナクロ」があり、人前で歌い演じることが宗教的な行為としてあり続けています。役への没入感や演目を鑑賞することから得られる高揚感は、キリスト教布教を助ける一方、政治的な思惑から植民政府によっても奨励されたと考えられます。

 

★企業が注目すべきポイント★

このような歴史的背景があることが、円満な職場づくりや顧客へのプレゼンテーションの場で実力を発揮します。採用企業にとって、フィリピン人の雇用は明るく活気ある職場に直結します。

 

フィリピンの学校教育が育む自己表現力‐採用企業が知るべき強み

 

フィリピン人の高い表現力は、彼らが受けた学校教育にも深く根ざしています。
フィリピン教育省(DEPED)は、MAPEH(Music, Art, Physical Education, Health)を子女教育の柱の一つとして重要視しています。日本ではそれぞれ音楽/図画工作/体育/保健などの独立した科目として、教育課程に組み込まれていますが、フィリピンでは一体的に学びます。
授業では、民族舞踏や歌唱に加えて、フィリピン語のポップスやカラオケも自己表現の一部として捉えられています。クラス内だけではなく、全校生徒を前で披露する機会もあります。

筆者が訪れたミンダナオ島の小さな漁村の、お祭りで行われた美人コンテストで、少女たちは集まった観客を前にして、歌ったり踊ったり、感情を込めた朗読や一人芝居を披露していました。大勢の注目を前にして臆することなく表現する姿に、驚かされました。
こうした経験が、フィリピン人の自信とコミュニケーション力を育んでいるのです。

 

★企業が注目すべきポイント★

彼らが受けた教育は、プレゼンテーション能力・積極性を高めています。採用企業にとって、社内イベントや顧客対応、チームビルディングで役に立つことでしょう。

 

海外のエンタメ業界でのフィリピン系アーティストの目覚ましい活躍

 

フィリピン人の表現力は、国内にとどまらず世界のエンタメ業界で高く評価されています。これは、彼らが持つ音楽的才能とチャレンジ精神の証です。
ちょっと古い話になりますが、ブロードウェイで活躍したレア・サロンガは「ミス・サイゴン」のオリジナルキャストとして主役キムを演じ、数々の権威ある賞を受賞しています。80年代のアメリカンロックバンド、ジャーニーは正式ボーカリストとしてアーネル・ピネダを加えたことで、懐メロバンドから第一線への復帰を果たしました。現在に至るまで世界的なヒット曲を放ち続けるアメリカのヒップホップグループ、ブラック・アイド・ピーズのアプル・デ・アップは、本国だけでも427万枚を売り上げた2005年のアルバムにタガログ語の曲を堂々と収録していました。日本でも人気の高いブルーノ・マーズを初めとして、数年前グラミー賞を賑わせたH.E.R.やオリヴィア・ロドリゴらは、フィリピンにルーツを持っています。ロンドンにはイロイロ州出身のビーバドゥービーという人気者がいます。
「自分も大好きな歌を歌って、あんなふうに人気者になりたい」-そんな夢を密かに抱いているフィリピン人は、多いのではないでしょうか。

 

★企業が注目すべきポイント★

エンタメへの傾倒は、フィリピン人が持つ積極性・創造性・人前で堂々と振る舞う力の源泉となっています。採用企業にとって、彼らはプレゼンテーション・接客・イベント運営の際に大きな戦力となります。

 

カラオケが大好き!

 

フィリピン人の「人前で歌うことへの抵抗のなさ」は、職場でのコミュニケーションやイベント運営において大きな強みとなります。その背景には、カラオケ文化が日常に深く根付いていることがあります。


フィリピンでは飲酒を主目的とした店のほとんどが、日本の居酒屋のようなおつまみを提供することはありません。代わりにというわけではありませんが、どんな場末の飲み屋にもカラオケセットは設置されており、営業時間中、歌声が鳴りやんで静かになったことなどありませんでした。筆者の住居の真向いの公共団地では、レンタルしたカラオケセットを屋外に持ち出して、朝方まで大音量の「ジャイアンリサイタル」が行われることがしばしばありました。
寝不足になるので、管理事務所を通して正式な苦情の申し入れを提案したら「そんなことを言ってくるのはあなたが初めて」と言われ、フィリピン人のカラオケ騒音への寛容さに衝撃を受けました。とにかく人前で歌うことが好きで、他人の歌を聞くことにも寛容だということは異論の余地はないようです。同居しているフィリピン人の妻も「お祭りみたいで楽しいじゃない」と言っていました。

★企業が注目すべきポイント★

カラオケ文化を通じて培われた自己表現力・社交性は、採用企業にとって大きなメリットです。社内イベントや懇親会で、フィリピン人スタッフが真価を発揮して場を盛り上げ、職場の雰囲気がより活気づきます。

 

まとめ

 

採用企業がフィリピン人の文化的背景と特性をよく理解した上で、彼らに活躍の場を提供することが出来れば、職場でのコミュニケーション円滑化やイベント運営の成功につながります。
「好きこそ物の上手なれ」といいますが、フィリピン人は歌やダンスなどのにぎやかなことが大好きで心から楽しむ人達です。彼らは明るく協調性のある職場づくりに間違いなく貢献することができるでしょう。

執筆者 上村康成 From TDGI東京オフィス