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2026.03.06

フィリピンの聖週間とは?各日の過ごし方から伝統行事まで徹底解説【ホーリーウィーク】

 

キリスト教カレンダーで最も重要な週としての聖週間

 

宗教的意味あいはともかくとして、キリスト生誕を祝うクリスマスは日本で広く親しまれています。商業的イベントして定着してきたためか、色鮮やかなイルミネーションと相まって冬を彩るロマンティックな風物詩として楽しまれています。一方でイエスが磔刑に処され絶命し、数日後に復活したとされるイースターを祝うことはあまり一般的ではありません。
東南アジア最大のキリスト教国であるフィリピンでは、木曜からの4連休を含むこの祝祭を聖週間と呼んで毎年盛大にお祝いします。わずか33年という短い生涯を終えたイエスの地上での最後とその後の復活の奇跡を、フィリピン人は追体験することでお祝いするのです。今年は3月29日からの1週間がこの聖週間にあたります。

 

日曜日

イエスのエルサレム入城を祈念して、この日のミサを行う教会の周りではパラスパス(Palaspas)が売られています。聖書にはナツメヤシの枝を手にした群衆がイエスを歓迎したと書かれており、パラスパスはその枝を模した編み飾りです。細長いヤシの葉を編んで作ります。これを玄関など入り口にイースターの期間中飾りつけ、一年の安全を祈念します。お正月の松飾りのようですが、時期が過ぎても家内に飾って翌年の「灰の水曜日」まで大切に保存します。

このパラスパスをお焚き上げした灰を使って額に十字を塗ってもらうのです。灰の水曜日には、おでこに黒い十字の印をつけた信者をよく見かけます。ご利益を少しでも長く大事にしたいからなのか、翌朝までつけている人もいます。前日から一度も顔を洗っていないのかと思うとちょっと不思議です。

 

月曜日から水曜日

平常通りに過ごしますが、普段は日曜日だけのミサが毎日行われます。パバサと呼ばれる独特の節回しで聖書の詠唱を夜通しする信者もいます。

 

木曜日

レオナルドダヴィンチの壁画で有名な「最後の晩餐」があったとされる日です。イエスはこれが弟子である12人の使徒たちと共にする最後の食事であることを踏まえ、供するワインを自らの血として、パンを自らの肉として分け与えたとされ、キリスト教では最も重要な秘跡の一つとされています。ミサの最後に行われる聖餐式はこれを記念したもので、信者たちが一列に並んで神父から小さなパンの欠片とワインをほんの一口飲ませてもらうことで、キリストの教えを受け入れ、それに従うことを象徴的に確認する儀式を行います。キリスト者でも洗礼を受けたこともない筆者が、フィリピンで生まれて初めてミサに参加したときに、一緒にいた周りの子供たちに手を引かれる状態で列に並ばされ、訳も分からないままこれを口にしてしまいました。知らなかったこととはいえ本来は許されることではありません。イエスも大目に見てくれているだろうと思うことにしています。聖週間中のこの日にビジータ・イグレシアと呼ばれる、7つもしくは14の教会を訪ね巡りお祈りを行う人もいます。

 

 

金曜日

イエスが拷問の末、十字架上で槍で貫かれ絶命したとされる日です。自らをイエスになぞらえて、剃刀で傷をつけた背中に鞭をふるい血を飛び散らせながら行進する信者もいます。パンパンガ州のサンフェルナンドでは実際に手のひらと足の甲に太い釘を打ち付け磔刑を体験するものまでおり、世界中から見物客が集まります。そこまで苛烈な体験でなくとも、十字架を背負わされたイエスが鞭うたれながら至ったゴルゴダの丘への道行を再現するために、急峻な坂道などに建てられた14の十字架を巡って、お祈りを捧げることは普通に行われています。
セナクロと呼ばれる素人劇は、車道を通行止めにして作られた舞台で有志によって演じられるキリスト受難劇です。熱演に力が入りすぎたのか、過酷な演出が災いしたのか、イエスを演じた役者が本当に死んでしまったことがあったそうです。クライマックスでは、天使役を演じる幼い子供が上方から釣らされて登場したりして、プロの劇団ではないだけに見物人をひやひやさせたりもします。
日が暮れる頃には聖像や十字架を山車に載せて、街を練り歩く行列も各地で行われます。人々は灯したロウソクを手に歌ったり祈ったりしながら列に従います。日本のお祭りで御神輿や山車が、お囃子にあわせて町中を練り歩くのに似ているかもしれません。

 

土曜日

この地上世界でのイエス不在のため、喪に伏す意味で真っ暗闇の土曜日のため、フィリピンではブラックサタデーと呼ばれます。

 

日曜日

復活を祝うイースターです。新約聖書にはイエスの生涯を綴った4つの福音書があります。それぞれ異なる視点でイエス像が描かれているようで、読み比べてみると大変興味深いのですが、ぞの全てに共通している書かれている奇跡がイエスの復活です。イエスはその後使徒の前に姿かたちを変えて現れることになりますが、磔刑の翌々日に墓所を訪ねると埋葬された棺が空であったとされています。宗教画では神々しい姿でよみがえったイエスの姿に驚愕するローマ兵などとともに、ドラマティックな場面として描かれることがあります。しかし福音書には誰かの目の前で復活したとは書かれておらず、墓の中が空であったと記されているところがなんとも味わい深いと思います。
家族そろってミサでお祈りをささげた後は、ご馳走を食べてお祝いします。再生の象徴である卵に可愛い絵を描いたり、家中や庭先に隠した卵を子供たちが探してその数を競ったりする、誰もが楽しみにしているお祭りの日です。

 

まとめ

 

お肉料理が大好きなフィリピン人ですが、この時期には肉食を控える習慣があります。ファーストフード店では期間限定でフィッシュバーガーやシュリンプバーガーが販売されるので、この時期に渡比した方はぜひ試してみてください。飲酒を控えたり、自分の好物を絶ったりする人もいることから、信者たちが身をもってこの祝祭を体験しようとするところに、信仰に篤いフィリピン人の特徴があるように思われます。

 

執筆者 上村康成 From TDGI東京オフィス