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2025.06.16

【2025年最新版】特定技能外国人ドライバーを受入れるには?自動車運送業の現状と課題、免許取得の流れを徹底解説

日本の自動車運送業界では、ドライバーの高齢化や宅配需要の増加、物流の2024年問題※等で、人手不足が深刻な問題となっています。厚生労働省の一般職業紹介状況(2025年3月分)によると、ドライバーの有効求人倍率は2.66倍に達しています。この人手不足を解消するため、在留資格「特定技能」においてトラック運送業、タクシー運送業、バス運送業の3つの業種で、外国人労働者の受け入れが可能になりました。日本政府が発表している2024年から5年間の自動車運送業分野特定技能の受入れ見込数は24,500人です。

厚生労働省ホームページ

 

1. 自動車運送業分野特定技能評価試験実施状況

 

自動車運送業分野の特定技能1号評価試験は2024年12月から行われており、2025年5月31日までに行われた自動車運送業分野特定技能1号評価試験合格者は、合計でトラックドライバー1,356名、タクシードライバー114名、バスドライバー184名です。

 

2024年12月から202年5月31日までに行われた自動車運送業分野特定技能1号評価試験実施国別結果

国名トラック
 合格者数
トラック
受験者数
タクシー
合格者数
タクシー
 受験者数
バス
合格者数
バス
受験者数
カンボジア7310181677
インド4651    
インドネシア24740811205368
日本763959871178190
マレーシア  23  
 モンゴル263912  
ミャンマー111133011010
ネパール 355311  
 パキスタン  06  
フィリピン1222  3031
スリランカ1618    
タイ26284433
ウズベキスタン11    
総計1,3561,813114170184209
合格率74.8% 67.1% 88.0% 

ClassNKの発表データよりよりTDG東京にて表にまとめました。

ClassNKウェブサイト

2. 自動車運送業分野特定技能1号の在留資格を得るには

 

外国人が自動車運送業分野特定技能1号の在留資格を得るためには、トラックドライバーの場合は特定技能1号評価試験に加えて日本語試験N4レベルの合格が必要です。
タクシードライバーとバスドライバーは日本語試験N3レベルの合格が必要です。
(日本語能力試験(JLPT)のN4レベルは、「基本的な日本語を理解できるレベル」です。N3レベルは、「日常的場面で使用される日本語をある程度理解できるレベル」です。)
また、日本の免許証(トラックドライバーは第一種運転免許、バス、タクシードライバーは第二種運転免許)の取得と、バス、タクシードライバーは新任運転手研修の終了が必要です。

 

 

3. フィリピン人が日本の運転免許を取得するには

 

外国人のかたが日本の運転免許証を取得するには以下の2つの方法があります。

 

1. 海外の運転免許証を日本の運転免許証に切り替える(外免切替)
2. 日本で運転免許試験(適性試験、学科試験、技能試験)を受ける

 

現在、警視庁で受ける第一種、第二種、仮免許学科試験問題の言語が20言語対応、外免切替えの際の知識確認問題の言語が24言語対応となっております。フィリピン人の公用語であるタガログ語、英語はどちらも対応言語です。

 

フィリピン人の外免切替

 

外免切替をする場合は、外国で免許を取得後、その国等に通算して3か月以上の滞在が必要です。パスポートなどでの免許取得日以降の滞在期間の確認が必要となります。
免許の取得国や取得状況等により、必要提出書類が異なります。また国により知識確認、技能確認が免除される場合もあります。
今回はフィリピン人の場合の外免切替についてお話いたします。
フィリピンで取得した免許は、日本で外免切替することができます。外国免許からの切替えの際、知識確認、技能確認が行われます。

 

A. 必要な書類(原本)

✔フィリピンの運転免許証(有効期限内のもの)
✔ フィリピンの運転免許証の日本語翻訳文(フィリピンの駐日大使館、日本自動車連盟(JAF)、ジップラス株式会社が作成したもの)
✔ 日本の運転免許証またはマイナ免許証(現在及び過去に受けたことがある人)
✔ 本籍(国籍)が記載された住民票
✔ パスポート(フィリピンで免許を取得後、3ヶ月以上フィリピンに滞在していることを証明するため出入国記録が確認できるもの。)
✔ 写真 縦3センチメートル×横2.4センチメートル(1枚)
✔ Certification with APOSTILLE(本国)
✔ License History、Official Receipt(本国)
✔ Immigration Record with APOSTILLE(運転免許の有効期間中の滞在の全てが確認できない場合は、本国)

B. 審査

Aの書類を提出し、審査が行われます。

C. 適性試験 

視力検査、聴力検査、色彩識別能力検査、運動能力検査

D.知識確認/学科試験

問題はタガログ語、英語でも受けることが可能。〇×式の二者択一問題で10問中7問正解すると合格

E.技能確認(技能試験)

指定するコースを走行して課題(指示速度による走行、一時停止、右折・左折、信号通過、段差乗り上げ)を実施。
運転行為の危険性に応じて100点満点から減点方式で採点される。
70点以上で合格。
運転技能検査に合格しない場合、外免切替できません。(不合格の場合、再受検は可能。

警視庁のホームページに詳細が載っております。ご参照ください。

警視庁のホームページ

 

4. 社会全体での交通安全対策の必要性

 

2024年から、特定技能制度に新たに「自動車運送業分野」が加わりました。さらに、空港で働くグランドハンドリング業務においても、日本での運転免許の取得が必要とされています。加えて、2025年からは介護職における特定技能外国人による「訪問介護」も認められるようになり、今後、日本で運転を行う外国人の数はますます増加していくと考えられます。外国人ドライバーの増加に伴い、無謀運転や逆走、ひき逃げといった事故の報道も増えています。しかし、これは外国人に限った問題ではありません。高齢者によるアクセルとブレーキの踏み間違いや逆走事故も深刻な社会課題です。

 

5. AIと制度改革で目指す「事故ゼロ社会」

 

今後は、AI技術を活用した運転支援システムやスマートインフラの導入が期待されています。たとえば

✓ 高齢者には自動ブレーキ搭載車の義務化
✓ 免許更新時の反応速度・視野テストの強化
✓ 外免切替制度の厳格化
✓ 外国人向けの母語による交通ルール講習の提供

これらの対策を多方面から実施することで、外国人ドライバーにとっても、日本社会にとっても、安全で持続可能な交通社会の実現が可能になるのではないでしょうか。

 

6. おわりに

 

日本の物流を支える新たな担い手として、外国人ドライバーの存在は今後ますます重要性を増すことと考えられます。そのためには、制度の整備・教育の充実・技術の導入の三つの柱を連携させ、安全かつ安心して暮らせる社会づくりが求められます。
これは、外国人ドライバーにとっても、日本企業にとっても、持続可能な労働環境の構築に向けた重要な一歩となるでしょう。

 

※2024年4月からトラックドライバーの時間外労働の960時間上限規制と改正改善基準告示が適用され、労働時間が短くなり輸送能力が不足し、モノを運べなくなるリスクが高まること